真夜中でも「おはようございます」…?

芸能界やダンサー界の挨拶では「おはようございます」が日常的に使用されています。本番(TVの収録やライブ,ステージの当日)はもちろん、普段のレッスンでもスタジオに入った時、初めて会った人には「おはようございます」と言います。

いったい何故、(真夜中でも)「おはようございます」なのでしょうか?あちきも初めは何も知らず、「なんかギョーカイっぽ~い」ぐらいの認識でこの言葉を使っていました。

これは元来、歌舞伎役者の間で使用されていた言葉だといわれています。昔の芸能界は歌舞伎出身の役者さんが多かったため、歌舞伎界のしきたりや言葉がそのまま芸能界でも使われ始めたというわけです。

それでは、なぜ歌舞伎の世界で「おはようございます」が使われ始めたのでしょうか?「…ございます」がついていると、「こんにちは」や「こんばんは」よりも丁寧に聞こえるから?なんて思ってましたけど、実は違っていたんです。

そもそも歌舞伎の舞台というのは、「1日2回公演」というのが当たり前だったので、1回目と2回目は違う役者さんが演じていたのです。(今でいう、「ダブルキャスト」ってヤツです。)

ですから、2回目の方に出演する役者さんは、自分の出番迄に劇場に到着すればよいのですが、大抵いつも1回目の公演時には既に着いていたといいます。その際、劇場の「楽屋番」と呼ばれる裏方さんが、この役者さんたちに対して、いつも

「お早ようございますね。」

と声を掛けていました。これは『出番までまだ時間があるのに、お早いお着きですね。ご苦労様です。』という意味です。従って、元々この言葉には「挨拶」というよりも、むしろ「気遣い」の気持ちが含まれていたのです。

そして、この「お早ようございますね。」がいつしか「おはようございます」に変化して、芸能界でも広まったと言われています。

普段、稽古場で何気なく使っている「おはようございます」に、こんな意味があったなんて…。改めて日本語の奥深さを感じてしまいました。

# 余談ですが、この言葉は飲食業や水商売の世界でも使われています。これは昔、芸事だけでは食べてゆけない役者さんたちの殆どがアルバイト先にこの職種を選んだからだそうで、そこから広まったといわれています。